或る日、僕は

「ほぅ…お客さんか、珍しいな。ここはダンジョンだ。わたしはここでコーヒー飲んでるから、ゆっくり見て行ってくれ。幸運を祈る。」Since 2014.

切ない夜の夜想曲

 夜。

 わたしは彼女のことを想っている。

 過ぎ行く時間。

 声が聴きたい。

 切ない夜。

 想い、焦がれる。

 苦しくて、たまらない。

 冷たい気持ちに、苛まれる。

 もし、彼女の胸に触れることができたなら。

 もし、彼女の髪を梳いてあげることができたなら。

 だけど、夜のわたしを知られることは、すこし、こわい気持ちもある。

 わたしは、わたしのことを、恐れている。

 もし、彼女について知る術があるとすれば。

 触れてみたい。

 脱がせてみたい。

 わたしの、目の前で。

 ふたりきりの、場所で。

 ふたりで、夜を過ごしてみたい。

 わたしは、すこし、思案してみる。

 彼女の、掌が、わたしを包むところを。

 彼女は、その掌で、わたしに触れてみたいと思っているはずだ。

 彼女の指先が、わたしの手に触れる。

 わたしも、指を差し出す。

 これは、彼女の小指と、わたしの小指が、約束を交わすため。

 触れた指先は、あたたかい。

 あたたかなぬくもりを。

 静かに、わたしは、その彼女のことを想っている。

 彼女のブラを外してみたい。

 彼女が、恥ずかしそうに、目をつむって、ささやいてほしい。

「好きだよ、てるさん」

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