中秋の候、貴下益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。今回は、ak_tonbo.musを解説します。
名演には及びませんが、少なくとも好演として、淡の作品の中でひときわ特別な思い入れのある一曲です。
私の歌唱は非常に特徴的であることで知られています*1。
譜面指定「全部歌い終わったあと、最初の一節をハミングで繰り返しても面白いと思います」の解釈を考えた過程についての散文です。
参考音源はありません。私なりに考えました。
「最初の一節」が、4小節なのか、8小節なのか、指定がないのです。
最初の4小節は、Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ→Ⅰで、Ⅴに第7音がないですが、カデンツを成しています。
次の4小節は、Ⅰ→Ⅳ→Ⅴ7→Ⅰで、こちらも終止です。きちんとした終止です。
「ステージに次の曲がある場合は最初の4小節を繰り返して余韻を残し、ステージの最後の曲である場合は最初の8小節繰り返して締めくくっていたのではないか」という推論を立てました。つまり、演奏の度ごとにアドリブを利かせていたのではないのだろうか、と。
この歌曲のデータは、本当に僭越ながら、編曲者の意図を再現することとは若干異なる形での終止となっています。
このデータの終止形は、開発者様と一緒に考えた中で、私が編み出した苦しまぎれの終止形です。
開発者様より、最初の8小節を繰り返す形での校正をいただきました。ヒントを示してくださったのでした。
しかしながら、「公開版を送付したうえで助言を受けてさらに改訂を加えるのはフェアではないと思った」ため、この形となっています。
開発者様より、「潔い判断だと思いました」と。
結果として、このデータは殿堂入りとなりました。
編曲の妙技、歌曲としての完成度など、曲に助けられている面、多々あります。
速度については、私が現役だったころ歌っていたテンポを可能な限り再現できました。
この曲、ベースにメロディが歌われることを特筆したい。
「ふだん、ボン・ボンとか、ダバダ~とかUmmmh~とかボーカリーズばっかりで、とにかくメロディーが歌いたい!」という思いをかなえてくれた一曲です。
なんといっても、メロディーの開始音がFなので、私の声域の中で最も低い音から始まるところが助かりました。
このFの半音下のE音は出せませんでした。なんせバリトンですから。在籍中に人数の関係でパート異動がありました。1年間バリトンで歌ってた旋律を、同じ曲をベースで覚えなおすという貴重な経験でした。この経験があったからこそ、一人多重録音を行うほどに、のめりこんでいったのでした。
べいすめんとしての十八番の曲です。
*1:ダイナミクスと言う言葉は、後年に知りました。フォルテッシモの限界を上げる特訓を受けたのでしたが、この翌年にピアニッシモの限界を追求することとなり、とんでもなくフラストレーションがたまった私。実は口パクで歌ったことがなく、本格的なトレーニングをやってました。日常生活に支障がきたすことになってしまったのでしたが…。頑張りすぎました。今だから言える話。というより、どうしても書いておきたい話。今ではもうトレーニングこそ行っていませんが、音感は健在です。絶対音はないですが(^^;